先日、建築ライターの方にCROP DESIGNの設計について取材していただきました。
今回取り上げていただいたのは、西宮・苦楽園のフラワーショップ「riche」です。
店舗と街の関係、空間を「開く/閉じる」という考え方、素材を選ぶ理由など、
普段私たちがどのようなことを考えながら店舗を設計しているのかを、
第三者の視点から丁寧にまとめていただきました。
以下取材記事を紹介します。
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SPECIAL REPORT
建築ライターによる CROP DESIGN のプロジェクトレポート。
代表<一級建築士/デザイナー >の片上氏に話を伺い、
設計を手がけた商空間・住空間にフォーカスしつつ、プロジェクトへの 想い、
空間デザインで大切にしていること、ディテールに込めたこだわりについて紹介する。
Vol.1【riche】ガラス越しの風景が、感性豊かな街と共鳴。パリスタイルのフラワーショップ

scale:60.70 m² date : 2025.4
▽目次
1.店舗は「街の一部」。⻑く愛される店であるために
2.ガラスの窓越しに、街と人が、ゆるやかにつながり合う
3.「開く/閉じる」の対比を意識し、心地いい居場所をつくる
4.明確な意図のもとにマテリアルを選定。必然性のあるデザインとは?
5.街に馴染むとともに、新たな出会いや景色が生まれてゆく
1.店舗は「街の一部」。⻑く愛される店であるために

「お花とゆっくり触れ合える場を提供し、人々に活力を届けたい」。
そんなオーナーさまの想い を形にした、フラワーショップ「riche」。
自然の美しさを大切にするパリスタイルのフラワーア レンジメントを通して
お花や植物が持つエネルギーに癒やされる、
ヒーリングサロンの一面も持 ち合わせる洗練された空間だ。

オーナーさまが CROP DESIGN に店舗設計を相談したのは、土地を取得された後。
「どんなお 店にしたいか」をヒアリングするとともに、「この街にとってどんな存在であるべきか」を設計 者として考え、
街との関係性をどう構築するかを意識したプランを提案したという。
「店舗は単体で完結するものではありません。
必ず、街や地域との関係性の中に置かれます。
店 の風景が、街の風景をつくる。その場所に必要な存在として街の一部になることで、⻑く愛され るお店となる。
CROP DESIGN では、街を豊かにし、人を豊かにすることをミッションとして 店舗設計に向き合っています」。
2.ガラスの窓越しに、街と人が、ゆるやかにつながり合う

そこでアイデアとして出たのが、ファサードに大きな開口をつくること。
ガラスのすぐ向こう側 には、フラワーアレンジメントの作業台であり、
お店のシンボルとなる大テーブルをレイアウト した。「大テーブルを囲み、お花のアレンジメントや会話を楽しむ人たち。
その賑やかな空気感が街に にじみ出し、街を歩く人の景色となるイメージを形にしようと考えました。
店内にいる人と外を 歩く人がガラスの窓越しにゆるやかにつながり、
楽し気な雰囲気に興味を引かれた人が『ちょっ と覗いてみようかな』とお店に足を向ける。
そんな流れがつくれたら素敵だなと、ストーリーを ふくらませていきました」。

お店の中と外を分断するのではなく、双方向な関係を構築できるよう、視線と動線を丁寧に設計。
プライベート感のある落ち着いた空間でありながらも、
街に開けた存在として人々を受け入れて くれる大らかさこそが、
「riche」の魅力になっているのだ。
3.「開く/閉じる」の対比を意識し、心地いい居場所をつくる

開口を設けるにあたり配慮したのが、すべてをオープンにしないこと。
プランニングの初期段階 では全面ガラス張りも検討していたが、
ただ丸見えなだけでは、「景色が街ににじみ出す空間」 という意図とはかけ離れてしまう。

そのため、大テーブルは窓のすぐ近くに配置する一方、お茶を飲みながら一息つくカフェテーブ ルは、
通りからの視線が届きにくい奥まった位置にレイアウト。

視線を集めるという感覚が高揚感につながる時間と、こぢんまりと落ち着いた空間でくつろぐ 時間。
ワンフロアをゆるやかにゾーニングしつつ、街に対して「ほどよく開く/ほどよく閉じる」 のコントラストをつけることで、
ひとつの空間の中に違った“心地よさ”をデザインした。

視線を集めるという感覚が高揚感につながる時間と、こぢんまりと落ち着いた空間でくつろぐ 時間。
ワンフロアをゆるやかにゾーニングしつつ、街に対して「ほどよく開く/ほどよく閉じる」 のコントラストをつけることで、
ひとつの空間の中に違った“心地よさ”をデザインした。

また、内と外の距離感の測り方でこだわったのが、シャッターの取り付け位置。
開口や壁の外側 に取り付けることが一般的だが、同物件では、開口の内側に収まるよう設計。
その理由を片上氏 はこう語る。
「シャッターを外側につけてしまうと、通りから一歩引いたところにお店がある感じになりま すよね。
街との距離感を縮めるには、通りからなるべく近くにお店がある方がいいなと。
設計・ 施工の難易度は上がりますが、そこはこだわるべきポイントだと決めていました」。

開口を前面に出す分、エントランスは通りから一歩引くことで「開く/閉じる」のバランスを調 整。
少し奥まったポーチを介して店内に向かう動線をつくり、外からの視線をほどよく遮る配慮がなされている。
4.明確な意図のもとにマテリアルを選定。必然性のあるデザインとは?

ハコとしての空間に温度感や手触りをプラスし、心地いい空気感を醸成するのに大切なのが「マ テリアル選び」。
CROP DESIGN では、設計とインテリアコーディネートを切り離すことなく片 上氏が自ら手がけ、
ハードとソフトの両面から世界観をトータルに構築していく。

ファサードデザインはフラワーアレンジメントのスタイルに合わせて、ヨーロッパの石造りの建 物をモチーフに考案。インテリアは木目の家具・建具とベージュカラーを基調にした落ち着いた 空間に、ガラスやタイルなど艶感のあるマテリアルを合わせて光や花の写り込みを狙いつつ、パリの華やかなエッセンスをさりげなく添えた。

インテリアは「好き/嫌い」だけを判断基準にしてしまうと、単なる素材のパッチワークになっ てしまいがち。だからこそ、オーナーさまの好みに囚われ過ぎないこと、あくまで主導権は自分 が持つことを意識しているという。


ここを中心に人が集まる大テーブルは、いわばお店の核となる部分。
ヨーロッパ調にトーンを揃 えるならモールディングなどの意匠が王道だが、少し趣向を変えるためにタイルを貼り、
間接照 明を設置。フロアを見渡した際、いい意味で浮いており、目が留まる存在になるよう調整した。

「異素材を使う際、明確な意図がなければ、継ぎはぎのまとまりのない空間になってしまいます。
『好き/嫌い』の感覚に振り回されず、なぜそうするのかを設計者としてきちんと説明できる状態にもっていく。
それによって、施工現場で図面通りにいかない部分を『どう納める?』という 話になっても最善の判断ができる。
現場が混乱せずスムーズに工事を進行させられるんです」。

本当の意味でオーナーさまに誠実に向き合 う姿勢だと思っています」。
5.街に馴染むとともに、新たな出会いや景色が生まれてゆく

「riche」が誕生して 1 年半。フラワーショップとしてオーナーさまが思い描いていたシーンの ほかにも、生徒や友人を集めてのランチ会、
出張シェフを招いてのパーティーの構想が立ち上が るなど、大テーブルを囲むという行為を起点に、さらなる豊かな時間が生まれているという。

華やかで心地いい空気感が街へとにじみ出し、通りを行き交う人の「素敵だな」「憧れる」「ちょ っと覗いてみようか」といったポジティブな感情が引き出されていく。
そんな幸せな連鎖反応が 生まれるのは、お店と街の距離感や関係性に着目し、店舗設計につなげる “仕掛け”があってこ そ。
オーナーさまも想像していなかった新しい出会いや景色が、これからも生まれていくに違い ない。