今日は外観について、書いてみようと思います。
店舗の体験は、扉を開けてから始まるわけではありません。
街を歩いているときに店を見つける。
外から中を覗く。
少し気になって近づいてみる。
その時点で、その店との体験はすでに始まっています。
だから店舗を設計するとき、私たちは店内だけでなく、
「店が街に対してどのような表情を見せるのか」を考えます。
その中でも大切にしているのが、外と中の「開き方」です。

どのくらい、店の中を見せるのか
例えば、ファサードを大きなガラス面にすると、
街から店内の様子がよく見えます。
商品だけでなく、スタッフやお客さんの姿まで見える。
中の様子が分かることで安心感が生まれ、比較的入りやすい店になります。
カフェや日常的に利用する店舗であれば、こうした街に対して開かれたつくり方が合うことがあります。
反対に、壁によって内部を隠し、小さな入口だけを設ける方法もあります。
中が見えないからこそ、扉の向こうに何があるのか分からない。
そこには、先ほどとは違った緊張感や期待感が生まれます。
高級店や特別な体験を提供する店舗では、この閉じた佇まいがブランドの重厚さにつながることもあります。
開けばいい。閉じればいい。ということではありません。
大切なのは、その店にどの程度の開き方が相応しいのかを考えることです。
開き方が、店との距離をつくる
全面を開く。一部分だけ開く。商品だけを見せる。
人の気配だけを見せる。入口だけをつくる。
同じ店舗でも、外と中の境界をどうつくるかによって、
街から受ける印象は大きく変わります。
例えば、全面ガラスの向こうで人が食事をしていれば、
その店の賑わいそのものが街に現れます。
一方で、小さな窓から一つの商品だけが見えていれば、その商品への意識は強くなるかもしれません。
つまりファサードは、建物の「顔」をデザインするだけではありません。
街と店との距離をデザインする場所でもあります。

ブランドを、どのように街へ見せるのか
では、どのくらい開けばいいのでしょうか。
それを考えるためには、先にその店のブランドを理解する必要があります。
誰でも気軽に立ち寄ってほしい店なのか。
少し特別な時間を過ごしてほしい店なのか。
商品を街へ見せたいのか。
中で過ごしている人の姿を見せたいのか。
あるいは、あえて中を見せないことがブランドらしさになるのか。
こうしたことを考えていくと、外観のデザインは単なる形や素材の問題ではなくなってきます。
そのブランドが、街や人とどのような関係をつくりたいのか。それが外観に現れてきます。
店に入る前から、体験は始まっている
店舗の外観は、店内に入る前に出会う最初の空間です。
開かれた店には、開かれた店の体験があります。
閉じられた店には、その先を想像させる体験があります。
そして、その間にも無数の「開き方」があります。
だから私たちは外観を考えるとき、
「どんな外観にするか」ではなく、
「この店は、街に対してどのくらい開くべきなのか」
というところから考えます。
店と街の境界をどうつくるのか。
そこには、その店がどんな場所でありたいのかが表れます。
店に入る前から、ブランドの体験は始まっています。